どこで食べても同じということはありませんよ。
愛知県が誇る豊橋カレーうどんは町おこしのために開発されたメニューです。 なので提供するお店は1店舗や2店舗ではなく、二桁を越える数の飲食店で展開 してその名を天下に轟かせようと目論んでおります。 しかし扱うお店が増えると品質管理、レシピの問題が発生します。 同じ材料を仕入れているチェーン店ならばどこでも同じような商品を提供することが できるでしょうが、豊橋市内には個人経営のうどん屋も多く営業しており、それらの お店で全く同じ物を食べられるようにするのはなかなか大変なことなのです。 なのでいくつかの決められたルールを守りさえすれば、その範囲内で各店舗独特の 豊橋うどんカレーを名乗ることが認められております。 このアレンジが認められる点はそれぞれのうどん屋さんの大将の腕の見せ所となり、 「他の店に負けてたまるか、究極の豊橋カレーうどんを完成させてやるぜ! とりあえず山篭りをして特訓だな、虫除けスプレー買ってこよっと」という流れから クマと戦闘をするはめになったり、大きなカブトムシを捕まえたり、幻の珍獣 ツチノコを目撃する店主さんもいるかもしれません。 純粋に修行だけをしたいと願っていてもその期間が長ければ、森の中である日 バッタリ熊さんに出会ったり、川を流される河童に遭遇するやもしれないのです。 そうした出来事は一見オリジナルの豊橋カレーうどんの開発には無関係のように 思われますが、どこからアイデアが閃くかはわかりませんので猛獣との遭遇や妖怪 との出会いも大切にしたいところです。 そして素晴らしいアイデアが浮かんだのなら、豊橋カレーうどんの定義から外れない 程度にですが取り入れて、ライバル店との差をつけるのです。 指定された食材を仕入れてレシピどおりに調理するのではなく、ある程度自由に アレンジすることが許されているので飲食店同士が競い合いより高みを目指せるのです。 こうやって各店舗がそれぞれ持ち味を活かし、他店とは異なる豊橋カレーうどん を地元民や観光客に振舞っております。 基本的な製造方法は同じでも違う店で食せばまた感想も変わってきますので、 初めての方は「豊橋市に2泊3日の旅行に行くってお友達に話したら、名物の カレーうどんを食べるといいって勧められたよ」といった感じになりますが、 何度も足を運ぶようになると「この前のお店はなかなかだったね、今度は雑誌にも 紹介されてたあのお店でカレーうどん食べてみようかな。ウズラの卵の使い方が 他店とは一味違うんだって。店主は元々タマゴ料理専門店で修行してたらしく、 市内ではエッグマスターとも呼ばれてる人物で彼の創造する数量限定のだし巻き卵 は絶品で、一口食べればほっぺが赤く染まるって噂だよ。そんな凄腕料理人の作る 豊橋カレーうどんがおいしくないわけがない、カレーうどんランキングがもしも あったのなら世界チャンピオンになったとしても驚かないね、ボクは。もう今から 楽しみで夜も眠れないよ、寝不足は美容の大敵なのにまいっちゃうね」と、いろいろ な飲食店で食べ比べる愉しみも出てくるでしょう。 使われている具材が違ったりお値段が違ったり、他所との差別化を図ろうとお店も 手を尽くしているので、食べる側もそれに応えるべく何店舗かで味わって優劣を つけたり、自分好みのお店探しをする喜びもそこにはあるのです。 どこで食べても同じ味、というのもチェーン店で得られるような安心感がありますが、 その反対にこのお店はこんな特色がある、変わった具を使用している、見たことのない 姿形をしているらしい、というのもワクワクさせられてしまいます。 味わったことのない未知の料理に挑戦する勇気を無くしてしまったら、人生は本当に つまらないものへと成り下がってしまいます。 ですので1回で簡単に満足してしまわず、みなさんもいくつかのお店で豊橋 カレーうどんを食べてみてください。